坂詰美紗子のラブストーリー「一生分のワンシーン」 第六回

「 アナザーストーリー 」

恋の最終回の裏側には、アナザーストーリーが存在する。

昔、四年程お付き合いしていた彼から「距離を置きたい。」と言われたことがある。

だよね、だよね。最近、素っ気なかったもんね。薄々気づいてはいたけれど、ダメージのデカさといったら半端ない。

体重はマイナス8キロ。 周りの友達からは「ねぇ?大丈夫?もう、骨皮筋子じゃん!やばいよ!」と心配され、名字と名前を失った私は数日後、スムーズな流れで恋も失った。

その翌日だったと思う。突然、彼の先輩が私のもとへやってきたのは。

二人の恋が最終回を迎える前、私たちと、彼の先輩、先輩の彼女の4人でよく遊んでいた。先輩は私のことも可愛がってくれていたので、一応別れの報告をした。 電話越し、自分の涙だけじゃ足りず、誰かから涙を借りたいくらいに泣く私を見るに見かねて、少し遠くに住んでいたにも関わらず、先輩は慰めに来てくれたのだ。

そして、悲しみに暮れる私にこう言った。

―木を見て森を見ずー

ハンカチ片手に「はぁ?」と首を傾げる私に、先輩は話を続ける。 「みさこちゃんは『木を見て森を見ず』だったんだ。多分ね、あいつは森を見ていたけれど、みさこちゃんは木を見ていた。だから、いつのまにか二人の間に歪みが出てきてしまった。みさこちゃん、次の恋ではちゃんと相手と同じモノを見つめるんだよ。」

それからしばらくの間、この言葉を忘れていたけれど、何かのタイミングで思い出して以来、心に置いている大切な言葉となった。

人生とは、恋も仕事もそれ以外でも、常に「誰かとの旅」の連続だ。旅をするなら、相手と同じ行き先を目指したいもの。そんな当たり前のことを、この言葉は教えてくれた。

恋の最終回は、残念ながらハッピーエンドじゃなかったけれど、この言葉のおかげで、人生の旅に誰かと出かける度に「私たちは森を見てる?同じ未来を見つめてる?」と考えられるようになった。 彼の出演しないアナザーストーリーのおかげで素敵な恋だった!そう思える最終回となった。

私たちはいつだって恋愛やちょっとした日常のワンシーンの中で何かをキャッチしながら生きている。 あなたの恋の最終回にもアナザーストーリーがありますか?

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